人の言葉が気になる~相手の気持ちを妄想する人の心理
こんにちは
名古屋で活動中。水野まこです。
リトリーブサイコセラピーという心理療法を使って
生きづらさの原因を探り、自分らしさを取り戻すお手伝いをしています。
前回の投稿から、かなりの日数が開いてしまいました。
現在の世間では、日本でのコロナ禍の第3波の勢いが収まりませんね。
私がこのブログを始めたのが今年の年始のことで、
コロナ禍により様々なことを考えさせられた一年となりました。
コロナのような予想もしなかった出来事はもちろんのこと、
心に不自由さがあると特に、変化を恐れる気持ちが大きくなりがちです。
人生に起こる出来事を等身大で受け止めて乗り越えられる心を育てていくことが、
これからの人生をより幸せに生きるために、大事なことだなと感じます。
さて今日は、「人の気持ちをあれこれ想像して気に病むこと」に注目してみます。
誰かに言われた言葉から相手の気持ちをあれこれ想像し、
こんな事あんな事が起こるんじゃないかと不安に発展していく人がいると思います。
ここでは、この想像と、さらに想像を膨らませることを『妄想』と呼びます。
妄想する人の中で何が起こっているのか、考えていきます。
目次
1.妄想する場面での妄想と現実
人の気持ちをあれこれ想像して気に病むことを、ここでは『妄想』と呼びます。
病むと書くと大きなことに感じますが、
心の問題解決に興味がある方なら、日常的な人との関わりで
モンモンとした気分が拭えないようなことを経験しているのではないでしょうか。
かつての私も(今も多少(^^;))
・あの人は怒っているんじゃないか?
・本当はつまらないと思っているのでは?
・嫌われているかもしれない
・酷い人と思われていそう
・ダメな奴と思われていたらどうしよう
など
と、あれこれ相手の気持ちを考えては、落ち込んだりしていました。
落ち込むことなど考えなければいいのに!!ですよね。
でもそんな簡単に行かないのが、無意識に考えてしまう心(脳)の難しさでもあります。
ここからは例をあげて考えていきます。
私の経験上の周りで起こったことを参考に、妄想の話(^^)でお伝えします。
幼馴染のAちゃんとBちゃんは、小中高と同じ学校、同じ部活で過ごしてきました。
しっかり者のAちゃんは、Bちゃんにとって頼りになる存在です。Aちゃんが行く学校へ、Aちゃんが入る部活へとBちゃんはAちゃんを追うようにして進んできました。
高校卒業後の進路を決める時期に来て、Aちゃんは早く自立したいと就職することを決めました。窓口が狭まる就職となると、Aちゃんを追いかけてBちゃんも同じ就職先へ、と言うわけにはいきませんでした。
Bちゃんは初めて、自分がどうしたらいいのか分からなくなりました。今までの選択がすべて、Aちゃんと同じという基準で進んできたからです。
Aちゃんからの「Bちゃんはどうしたいの?Bちゃんが決めたことを応援するよ」
との言葉に、Bちゃんは答えられませんでした。
Bちゃんの中では、Aちゃんはどんなつもりで言ったのだろうと、探っていました。
「Bちゃんは、まだ決めないの?のろまだね。本当にやる気があるの?」
Aちゃんの本音を想像しては、そのことが頭から離れなくなりました。
そしてその後、
Bちゃんは、同じクラスのCちゃんと同じ専門学校への進学を決めました。
進路を決めたBちゃんに、Aちゃんは言いました。
「Bちゃんも、やりたい事を見つけたんだね。頑張ってね」
Bちゃんは、「頑張るね」と答えながら、頭の中では、
「Cちゃんは前から希望していたから分かるけど、Bちゃんみたいに急に言い出して出来ることじゃないでしょ。今更やりたいって本気で言ってるの?」とAちゃんが思っているように感じていました。
Aちゃんに気持ちを確認することもなく、Bちゃんは落ち込んでしまいました。
ここでBちゃんを中心に起こった事柄を整理してみます。
Aちゃんの事実:進路を決めている。
Bちゃんの事実:進路に迷って、決定していない。
Aちゃんの事実:「Bちゃんはどうしたいの?Bちゃんが決めたことを応援するよ」と発言
Bちゃんの事実:Aちゃんの問いに答えられない。
Bちゃんの妄想:「Bちゃんは、まだ決めないの?のろまだね。本当にやる気があるの?」とAちゃんが思っていると想像
~その後~
Cちゃんの事実:専門学校への進学を決めている。
Bちゃんの事実:Cちゃんと同じ専門学校への進学を決める。
Aちゃんの事実:「Bちゃんも、やりたい事を見つけたんだね。頑張ってね」と発言
Bちゃんの事実:「頑張るね」と発言
Bちゃんの妄想:「Cちゃんは前から希望していたからわかるけど、Bちゃんみたいに急に言い出して出来ることじゃないでしょ。今更やりたいって本気で言ってるの?」とAちゃんが思っていると想像
『事実』と書いてある部分は、
発言など他人が認識できる形で表現され、Bちゃんが認識した現実に起こった事柄です。
『妄想』は、Bちゃんの頭の中で広がっているだけで、他人には認識できないことです。
強調している箇所は、Bちゃんの設定上、Bちゃんへ心理的に影響を与えている言葉です。
これを見て、どんな感想をお持ちでしょうか?
Bちゃんは自信がないんだな。Aちゃんに責められるのが怖いんだな。
そんな風に想像(妄想)する人もいるかもしれませんね。
2.妄想する人の中で起こっていること
前項のBちゃんの妄想の部分の内容は、
Aちゃんの事実の発言から感じ取れると言えるものではありません。
ではBちゃんは、この妄想をどこから持ち出してきているのでしょうか?
・まだ決めないの?のろまだね。
・本当にやる気があるの?
・○○ちゃんならわかるけれど、あなたには出来ることじゃないでしょ
・やりたいって本気で言ってるの?
これらの言葉はBちゃんにとって自分や自分の行動を否定する言葉です。
考えていると、自分がダメ人間に思えてきて、気力が奪われて、行動が止まってしまいます。
しかしこの言葉は、
Bちゃんの中で、自分で引っ張り出している以外の何モノでもありません。
この様に、自分の頭の中で、自己否定として反芻する言葉は、
幼少期に両親など養育者から受けたメッセージとして記憶されている場合があります。
辛い言葉であっても、子供にとっては、受け入れることで、
家族の一員としての役割をもらえ、居場所があるといった感覚を得られます。
本当の安心感でなくても、生きていられるといった歪んだ安心感(とここでは呼びます)
として根付いて、大人になっても手放すことが難しくなっていると考えられます。
Bちゃんは、ずっと一緒だったAちゃんから離れることになり、一人の進路をどうしていいのか分からないといった不安な状況に陥っていました。
そこでBちゃんは、わざわざ自己否定という別の不安を作り出して、自分の中に根付いている歪んだ安心感を得ようとしていました。
Bちゃんが本当に怖かったのは、居場所を失い一人になることです。
ダメな自分でいれば居場所という安心感を感じられる。
それがメリットとなり、一人でいる不安よりも、自分で自己否定の不安を持ち出すという選択をしていたのです。
そして他の問題も複雑に絡むと
Bちゃんを例に、こんな原因のケースも考えられます。
自分がやりたいことが分からないBちゃんにとって、Aちゃんは、自分のやりたいことを考えなくて済む利用できる存在でもあったのです。
Aちゃんを追うことで、迷うことなく進んできて、
自分の進む道を選択できるという理想の自分を演じていられました。
しかしAちゃんという基準を失い、自分の判断で決めるとなると、ダメな自分が前面に出てきます。そしてダメな自分でいることが、Bちゃんのメリットでもあります。
ダメな自分でいれば、自分で決めることを諦めて、自分の責任を作らなくて済む。
Bちゃんが本当に怖かったのは、自分の人生を自分で決めて責任を持つということだったのです。
Bちゃんにとって、自己否定という別の不安を作り出すことは、
本当に避けたい恐怖を避けることができるメリットでもあったのです。
そしてこのあとの展開をつけ加えると
Bちゃんは、自分で作り出した自己否定の不安を払拭するために、別の人に「私なんかが専門学校を選んでよかったのか自信がない」と不安を相談しました。「やってみないとわからないよ。Bちゃんなら、大丈夫」との言葉を貰って、Bちゃんは元気を取り戻しました。
このように、人の言葉から自己否定の不安を作り出し、
人からの言葉で不安を払拭することを繰り返す場合もあります。
これは、自分でOKを出さずに、人にOKを貰うことを支えとする生き方と言えます。
ここにも、人に依存したり、人と関わりを持てるメリットが存在します。
本人にとっては嫌な自己否定の妄想ですが、悲しいことに、
歪んだ形ではあっても、そこに何らかのメリットがあると考えられます。
暗示のように根付いた自己否定は、幼少期に飲み込んだ生きるためのメッセージかもしれません。
それが両親との唯一の繋がり方だとしたら、本当に切ないことです。
子供の頃には生きるための必要条件であっても、大人になった今は、本当は必要ありません。
ときには自分に向けられる温かい気持ちを否定して、
人との繋がりを自ら壊してしまうようなことも起こります。
自分で妄想を作り出していると気づいたのなら、手放していきたいですよね。
3.ネガティブな妄想を手放していく
日常的にパターン化されるような妄想は特に、嫌なことであろうと、
作り出すことにメリットがあるから作り出していると考えます。
ここまで例をあげて考えてきたことは、ネガティブな妄想のほんの一例に過ぎませんが、
被害妄想という言葉があるくらい
被害者の妄想をした場合だと
・人に見てもらえる
・自分の否を見なくて済む
・相手より優位な立場になれる
など
その人によって、妄想する場面やメリットは様々です。
一見、「人の言葉が気になる」と、妄想する人は受け身な感じがしますが、
実は妄想のメリットが強いほど、利用できる言葉を待ち望んでいることもあります。
だから自分を肯定する言葉を人から貰っても、相手の本心は違うのではないかと疑い、
自分を否定する材料に利用するということが起こるのでしょう。
悪い言い方をしてしまうと、ネガティブな妄想をする人にとって、人の言葉は餌のようなものです。
言葉が曖昧であるほど、都合よく味付けできます。
だから、もし不安になったときに、人に不安を吐き出して言葉を求めるよりも前に、
自分の内側に自分の本心を問い、受け止めることが大切だと思います。
自分で気づいたなら、このパターンを抜けるんだと決意していってほしいです。
もし自分のネガティブな妄想をやめたいと思うなら
・否定的なことが浮かんだら、妄想しているかも?と疑う
・自分の頭の中にあることが、妄想なのか事実なのか区別する
・事実を区別する場合、相手の言葉を聞いて確認する
・妄想することで、何(どんな感覚)を避けられるのか?
何(どんな感覚)を得られるのか?自分に問い、自分の本心を受け止める
・繰り返す妄想パターンに気づく
このような行動の積み重さねで、妄想グセも減り、認知の歪みも改善されていくように思います。
妄想だとわかっていても、湧いてくるような根強い恐怖は、
セラピーなどで扱ってもらうこともお勧めします。
ちなみに自分に力を与えるようなプラスの妄想なら、私は、利用したらいいと思う派です。
例えば、偉人や有名人とか憧れの人だったら、どう行動するか?とか。
どうせするなら、幸せになる妄想をしましょう(^^)
自分の幸せは自分次第です。
では、今日はここまでです。
来年は、世の中が明るい未来に向かっていけるような年になるといいですね。
今年一年ありがとうございました(^^)/
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